フォーラム福岡

パブリックアクセス誌フォーラム福岡

「アジアの交流拠点都市・福岡」の実力と魅力を高めるまちづくり

2013年3月31日発行の48号より

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約25年ぶりに策定した福岡市基本構想(2012年)は、福岡市が目指す都市像を「住みたい、行きたい、働きたい。アジアの交流拠点都市・福岡」とした。世界はグローバル化が進み、カネもモノもヒトも情報も国境を越えてやってくる。そして、世界の都市と地域が直接結びつくことも増えている。この時代の主役は国家ではなく都市であり、それにふさわしい実力と魅力が求められる。

アジアにおける福岡という遺伝子を想起する

福岡のアイデンティティーと言えば、金印の時代から大陸との交流の窓口、中世の国際貿易都市、港町、福岡・博多の双子都市、山笠・どんたく、他所の人を受け入れやすい開放的な町、商業都市といったところだろうか。巻頭インタビューで、西村幸夫さんは「地元の人がまち自慢ができる都市であることは福岡の大きな魅力」と話している。

福岡市は第1次総合計画(1961年)で、工業都市をモデルに将来計画を考えたが、わずか5年後の第2次基本計画では、商業地として栄えてきた歴史を踏まえ、商業・情報・サービス機能を強化して九州の中枢都市を目指す路線に転換している。その後の成長はご承知の通りで、1988年の第6次福岡市基本計画で掲げた「海に開かれたアジアの交流拠点都市」路線が今日の基礎を築いたと言われている。昨年末に策定した基本構想でも、「福岡都市圏、九州、アジアと共に成長し、世界中から人、投資、物、情報、そして夢が集まる、活力と存在感に満ちたアジアの拠点都市を目指します」と掲げた。

鈴木恵一さんの巻頭言は、「アジアにおける福岡という概念は遺伝子でありながら、この20年、アジアの中で福岡の国際的な影響力にあまり深化が見られない気がする」と危惧されている。今後、この危惧を杞憂にする努力が求められている。

福岡はアジアにとって必要な機能の何を担うのか


「都市格について 大阪を考える」(大西正文著 創元社発行)

大阪商工会議所の会頭を務められた大西正文さんが在任中(1992〜1999年)、都市格を高めるということをしきりに話され、「都市格について―大阪を考える」という本(創元社、1995年発行)も出版されている。

「人に人格があり、会社にも社格があるように、都市にも都市格があるのではないでしょうか。そして、お金持ちだから『あの人は人格が高い』とか、利益が多いから『あの会社は社格が高い」とか言わないように、都市についても経済力があるというだけで『都市格が高い』とは言えません。もっとも、旺盛な経済力の上に精神的な豊かさや魅力的な文化が花開いたというのも歴史的な事実です」

都市格とは、経済力、文化、アメニティ、生活環境、教育、市民意識など様々な要素をトータルしたもので、経済力が文化の振興、快適な生活環境などに活かされ、それらがさらに経済力を増幅するというような、よき循環をつくっていくことが重要です、と述べている。そして、都市格向上のためには、都市として基本的に到達しておかなければならない必要条件として、(1)住みたい都市(2)経済活力のある都市(3)豊かな市民意識を育む都市―を、その都市ならではのアイデンティティーを発揮させるための十分条件として、(1)中小企業が輝く都市(2)歴史や文化が息づく都市(3)アジア・太平洋地域との共栄を図る都市―を挙げている。大阪が世界の都市と競争できる都市格向上を目指したものであった。

福岡にとっては、福岡の果たす役割が何か、という視点が欠かせない。九州、日本、アジア、世界にとって何が必要かを考え、福岡が何を担うのかを考えてみたい。

まちづくりの新しい理念と哲学、ふさわしい仕組み

巻頭インタビューで、西村幸夫さんは「21世紀は一人ひとりがひとつひとつの建物がこれからのまちの楽しみ方や住み方についての知恵や考え方を出し合っていく時代」と述べ、トップダウン型のまちづくりを否定している。行政も市民の論理に意識を変えていかなければならない。図書館や美術館などを利用する、つまり、使う側の市民が自分たちの図書館、美術館という意識を持てば、自分たちのまちという意識になり、まちづくりにおいてもいろんな取り組みが始まるだろう。

また、特集の「まちづくりを刺激する都市の〝ツボ〟」で紹介したように、ビジネスマンやIT技術者の新たな交流拠点、アントレプレナーサロン、コワーキングの共有スペースなど新しい使い方も生まれている。都市は人が集まってお互いに刺激合うことで新たな発想が生まれ、情報を生産する場所でもある。こういったサロンの機能が新産業を生み出し、世界から人材も集まりやすくなる。

その都市に住みたいというのは、そこに住むと何か楽しいことが起きる可能性があると思うことではないだろうか。それが人であったり、ビジネスであったり、文化的なものであったり、食べ物であったりする。魅力ある都市の集積が将来を担う企業や産業を生み出すだろう。

そう考えれば、まちづくりは産学官民が一体となって取り組むものだろう。都市の再生を図ることは住民だけでなく企業にとっても長期的には必ず大きなプラスになるという認識の共有が重要だ。

大福岡都市構想を提唱した渡辺与八郎は「電車が通れば家はつぶれてもよい」と公言したが、博多湾の大築港計画では、博多湾築港株式会社社長の中村定三郎が、その弟で築港の資金援助者である精七郎に出資を勧めた際に、精七郎は「有意義な事業に投資するのであれば、たとえ完成しなくても後人が継いでくれるであろうから少しも惜しまない」と答えている。潰れさせてはいけないが、現代人もこれぐらいの気概は持ちたいものだ。

福岡の都心再生にあたっては、これまでのやり方を踏襲するのではなく、新しい理念と哲学、それにふさわしい仕組みの下で力を合わせて取り組むことが求められている。(神崎 公一郎)


福岡市の将来ビジョンづくりではワールドカフェなどの手法も積極的に取り入れて、幅広い市民の声を集めた(画像提供:福岡市)

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※当ページの内容は、2013年3月31日発行の48号に掲載されたものです。

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